目の前に死に直面している人がいます。人口呼吸や心臓マッサージを施せば命が救えると頭でわかっていても、気が動転し、手が震えてしまうというのが普通です。しかし、これでは困ります。できなかったではすまされないのです。私たち現代人は、日常生活の中でいつ何時、死に直面している人に遭遇するかわかりません。
現在、1日に約100人の方が亡くなられています。これは、交通事故死のおよそ5倍もの数になることをご存知でしょうか。
何の前兆もなく働き盛りの人を襲う突然死。「予期していない突然の病死」のことで、発症から死亡までの時間が24時間以内という医学的定義がされています。その原因には、急性心筋梗塞、狭心症、不整脈、心筋疾患、弁膜症、心不全など心臓病によるものが六割以上と多く、ほかに脳血管障害、消化器疾患などがあります。
突然死の中でも心臓病に原因するものを心臓突然死といい、急性症状が起こってから1時間以内と短時間で死亡するため、「瞬間死」ともいっています。心臓突然死は年間約5万人といわれ、その中で特に多いのが急性心筋梗塞です。
一方、中高年者のスポーツによる突然死も無視できなくなっていますが、スポーツによる脳血管障害は意外と少ないようです。40歳以上では、種目別では、ゴルフ、ランニング、ゲートボール、水泳、登山、テニスに多いことが知られています。
突然の心臓発作や心臓震盪で倒れた人のほとんどが、心臓が細かく震える心室細動という状態におちいり、血液を全身に送り出せない状態になります。心臓が心室細動状態に陥ったときに心臓の機能を元に戻すために最も有効な処置が、心臓の筋肉に電気ショックを与えることであり、それを可能にするのがAED(自動体外式除細動器)です。
そして、2004年7月に日本でも一般市民のAED使用認可への道が開かれることとなりました。空港や競技場から始まり現在では、AEDは町のあちらこちらで見られるようになり、多くの方にAEDの存在が知られるようになりました。
一般市民のAEDの使用認可により、AEDは社会に急速に普及し設置が進みました。その反面、AEDを含む救急蘇生法を学ぶ訓練施設の不足が問題となってきました。目の前で人が倒れ、AEDがその場にあっても、救命処置が出来ない状況が発生することが危惧されるようになりました。
以前、県立高校野球部の試合中に男子部員が胸に打球を受け、心臓震盪を起こして倒れ、同校生徒が心臓マッサージを行い、救急隊員の処置によって蘇生しましたが、重度の後遺症が残り、言葉も話せない状態になりました。教員らの救命措置が遅れたために後遺症が残ったとして、両親らが県を相手取り損害賠償請訴訟がありました。野球などのスポーツでは心臓震盪の発生が予想できるにもかかわらず、引率教員が救命に有効なAEDを準備していなかったことなどが救命処置遅れにつながり、安全配慮義務を怠ったと主張されています。
AEDを準備してないこと自体が、安全配慮義務を怠ったという時代です。突然の心停止を起こした尊い命を救うには、企業の方にも心肺蘇生法(CPR)やAEDの使い方を知って頂くことが不可欠です。最初の数分が生死の分れ目となる救命現場。いざというときに慌てないよう、日頃から講習会などに積極的に参加し、しっかりと学んでおきたいものです。